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実習生、新人薬剤師の悩み|「服薬指導で何を話したら良いかわからない」

スキルアップ

こんにちは、やくえいといいます!

毎年、うちの病院にも何人か実習生さんが来ています。
現在はコロナ禍で制限がかかっているものの、みんなマジメに実習に取り組んでくれているのでこちらとしても良い刺激になっています。
そんな実習生からよくある相談・・・

服薬指導で患者さんと何を話したらいいんでしょうか?
全然会話が続かなくて・・・

患者さんに服薬指導する時はどういうことに気を付けてる?

しっかり薬の効能効果を説明して、副作用はよく起こりやすいものから注意を促して、用法用量は指示通り守るように指導してます。

うーん、なんていうか・・・


実習生さんに限らず、服薬指導の業務をし始めた新人薬剤師の方の多くが抱えるこの悩み。
マジメなのがゆえに、こう悩んでしまうのかもしれません。
先輩薬剤師の方も相談されたことがあるんじゃないでしょうか。

僕自身は元製薬会社のMRであるために話慣れているということがあるかもしれません。
しかし、転職してはじめの頃は同じような悩みを持っていました。
というのも、営業トークと服薬指導は別物だと改めて感じたからですね。
今回はこの悩みに対して僕なりにお答えしていこうと思います。

「患者さんの話を聞こう」とは言うものの

あ、でも、ちゃんと患者さんの話聞くようにって実習前にも言われてきたので聞いてるつもりですよ。

まぁ、ちゃんと話聞くのは大事だよね。
何でよく起こりやすい副作用から注意を促してるの?

患者さんにお渡ししてる薬の情報書にもよく起こる副作用が書いてあるし、やっぱり起こる可能性の高いものはより注意してもらったほうが良いのかなと。
予防や早期発見のためにも初期症状などを説明してます。そのためにも患者さんからよく話を聞こうと思ってるんですが・・・

そのあたりの説明は薬剤師としてはものすごく重要だね。ただし・・・


いかがでしょうか。
先輩薬剤師の方にはあるあるの光景ではないでしょうか。

この実習生さんはとてもよく勉強されているようで、実習ながら患者さんのためを想ってくれています。
実習の評価としてはとても良い評価をもらえると思います。

では何故、会話が続かないのか。
カンの良い方はわかるかと思います。

その患者さんに好ましくない副作用 ≠ よく起こる副作用

だからですね。
患者さんには生活があって、仕事や住環境などが人によって異なるからです。
年齢、性別、性格や家族構成も人によって異なります。
疾患によっては心身の機能や身体活動、社会参加に制限がかかる場合もあります。
今回は副作用で話を進めちゃってますが、「その患者さんが欲しい効能効果」も考え方は同じですね。

「いや、そんなことはわかってるから」という声も聞こえてきそうです。
実習生さんはもちろん、新人薬剤師の方も必死になって採用薬や疾病の勉強をしています。
間違った説明をしちゃいけないので、薬のことや病気のことをたくさん知らなきゃいけないんです。
そうしているうちに先ほどのような事例になってしまうんですね。

でもそんなの慣れれば大丈夫、できるようになりますよ。
と言いたいところですが、やはり考え方やスキル、ツールはある程度あったほうがステップアップしやすいです。
私が実践してきた以下のことを紹介していきます。

・国際生活機能分類(ICF)で全体像をとらえる

・問題志向型システム(POS)で次につなげる

「あ~知ってる知ってる」という方も多いと思いますけど、そういう方もおさらいのつもりで読んでいって頂ければ幸いです。
長くなるので今回は「国際生活機能分類(ICF)で全体像をとらえる」について説明していきますね。

国際生活機能分類(ICF)で全体像をとらえる

薬というのは良くも悪くも患者さんの健康状態に影響します。
もちろん、良い作用(効能効果)はしっかりと出てほしいですよね。
逆に悪い作用(副作用、有害事象)はなるべく出てほしくないと思います。
そのために薬剤師がしっかりと説明してるんです。

ただこういう話って、雑な言い方すると「一般論」なんですよね。
その患者さん、個人に当てはまる話とは限らないわけです。
薬の説明をしっかりしなくちゃいけないと思うと、どうしてもそうなりがちです。
そんな時バランスを取ろうと思ったら以下の「国際生活機能分類(ICF)」における「生活機能モデル」を用いると整理できます。

https://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n332/n332018_01.jpg

「国際生活機能分類(ICF)」とは生活の全体像についての共通言語です。
その理念に基づき把握するためのものが「生活機能モデル」です。
ちょっと何言ってるのかわからないですね。笑

これらは設計図みたいなもので、どこかに異常があればそれ以外のところにも悪い影響を及ぼすということをわかりやすくするために図にしたもの。
と今回は思ってもらったら良いです。

「健康状態」は心身機能・構造、活動、参加といった「生活機能」に相互に影響するし、「生活機能」には「環境因子」や「個人因子」が関係しますよ、というものです。

例えば足を骨折した(健康状態)人がいるとして、その人は高齢、独居(個人因子)で家に入るには階段を上らなければならなくて(環境因子)、それが億劫でいつも楽しみだった町内会の会合にも出られず(参加)、誰かに頼めないから身の回りも上手くできず(活動)、この生活が嫌でどうにかなってしまいそう(心身機能・構造)。
みたいな感じですね。

極端すぎる?
いえ、意外と患者さんと話してると、ここまでではなくても似たような方いますよ・・・

あまり服薬指導と関係なくない?と思われたかもしれません。
そう思うのは無理もありません。
だってこれ主に使ってるのリハビリスタッフさんとかですもん。笑
でも薬剤師だってこの図は理解しておいてほしいです。

感染症(健康状態)には抗生剤を投与すれば良くなるし、心房細動(心身機能・構造)には抗不整脈薬を投与すれば改善します。
ただし残念なことに、薬がこのモデルで影響するのはせいぜい「健康状態」と「心身機能・構造」くらいでしょう。
副作用についても添付文書に書いてある症状などを見ればほぼ同様ですね。
そのくらい偏っているんです。

それをそのまま説明してしまうと、「え~私の環境因子や個人因子どこいった~?」「活動や参加は~?」となってしまうんですね。
運転免許持ってない人に眠気が出るから運転しないでねって言うと「いや、それ私と関係ないでしょ・・・」って気まずくなりますよね。
大きくても小くてもこういうズレがあると会話って続かないもんです。

僕自身もこんな経験があります。
オキサリプラチン投与中で何回も服薬指導している患者さんに、末梢神経障害の程度を聴くために有害事象の一般的な用語基準(CTCAE)https://ctep.cancer.gov/protocolDevelopment/electronic_applications/ctc.htm#ctc_50に準じて質問しました。

僕:「服のボタンをかけることは難しいですか?」

患者さん:「いつもボタンのない服着てるけど?楽に着れる服が好きなんでね。」

はい、気まずいですね。笑
そんなん気づくかっ!って高レベルな問題ですけど、確かにその人のライフスタイル(個人因子)でもあるんですよね。
でも仕事柄、確かにそういう服装かもって気づくべきでしたね。

話がかなり脱線してしまっていますが、薬はその人の生活に影響を及ぼすことに変わりはありません。
しかもその影響としては大きいほうだと個人的には思います。
ただしその影響も、その人の生活ありきということを忘れたら意味がありません。
それを整理してくれるのが「国際生活機能分類(ICF)」なんですね。

やり方としては服薬指導前に、わかる範囲でこの図のそれぞれの因子にその人の健康状態や環境・個人因子にあてはまるものを書き出していくだけです。
初めての患者さんだと性格などの個人因子は埋めきれないと思います。
それは聞きながら埋めていけばいいんです。
それも会話になりますから。

埋めきったら設計図が完成するので、その患者さんに合う服薬指導をしましょう。
そうしたらきっと「この薬剤師さんは私の話をよく聞いてくれて、私のために説明してくれる」と心開いてくれると思います。

あれ?結局「話をよく聞く」に戻ってしまいましたね。
そうなんです。
薬がその人の生活にどういう影響をもたらすか、それを考えるのが僕たち薬剤師の仕事なんです。
そのために「話をよく聞く」んですね。
まぁ、確かに教科書とか参考書にそう書いてあるんですけども。笑

でも残念ながら、どうやっていくかまでは書いていないです・・・
そんな時、この「国際生活機能分類(ICF)」の活用に僕はたどり着きました。
慣れればわざわざ書き出す必要もないかもしれませんが、実習や服薬指導の業務しはじめ、行き詰まった時などにはご参考にして頂ければ幸いです。

まとめ

今回は実習生さんや新人薬剤師の方が抱えやすい「服薬指導で何を話したら良いかわからない」について僕なりにお答えしました。
その答えのひとつが「国際生活機能分類(ICF)」を用いて患者さんの生活の全体像を把握していくことにあります。

その目的としては「薬がその人の生活にどう影響していくか?」をバランス良く考えていくことにあります。
そのことに関してだけ言えば、主治医や担当看護師さんよりも薬剤師のほうが適任だと思います。
薬剤師の仕事って突き詰めれば教科書通り、「話をよく聞く」に集約されてくると思います。
それを整理していく手段が「国際生活機能分類(ICF)」ですね。

なかなかくどくなってしまいました(反省)
「わかったわかった、全体像を把握できるようになった。それで、次にその患者さんのためになるように考えていくにはどうすれば良いの?」

はい、それを実践していくためのツールが「問題志向型システム(POS)」です。
次回以降、記事にしていきたいと思います。

それでは、また!

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