こんにちは、やくえいといいます!
薬歴の書き方って先輩薬剤師に教えてもらったりしているけど、イマイチよくわからなかったりするんじゃないでしょうか。
1から教えてもらいたいけど先輩も忙しそうだし、結局そのままになっちゃって薬歴の正解がわからなかったりします。
実際のところ正解なんてないんですが、少しでも形式的に理解しておきたいところですね。
僕は病院薬剤師をしていて患者さんへ服薬指導することもあります。
薬歴にしっかり残しておくことは患者さんの情報を整理しておく点でも重要です。
また、僕が休みの時に他の薬剤師が見てわかるようにするという点でも非常に重要になってきます。
はじめは薬歴ってどう書いたら良いかわからなかったです。
SOAPやPOSについて理解をしていくことによって徐々に形になってきました。
今回は薬歴の事例についてご紹介していきますが、その前に以下の記事を読んでおくことをオススメします。
処方箋の受付と病態の推測
74歳 男性
身長/体重:165cm/70kgくらい
【処方箋の内容】
アピキサバン錠5mg 1日2回 1回1錠
朝・夕食後 28日分
アムロジピン錠5mg 1日1回 1回1錠
オルメサルタン錠10mg 1日1回 1回1錠
シタグリプチン錠50mg 1日1回 1回1錠
ヒドロクロロチアジド錠12.5mg 1日1回 1回1錠
ビソプロロール錠2.5mg 1日1回 1回1錠
朝食後 28日分
ボグリボースOD錠0.2mg 1日3回 1回1錠
毎食直前 13日分
処方箋を受け取った時に何となく疾患を予想するかと思います。
既往には高血圧症、糖尿病、心房細動、そして心筋梗塞か脳梗塞があるかもしれないです。
歩行障害など麻痺があれば脳梗塞が予想できます。
そしてボグリボースのみ処方日数が違うということは飲み忘れていることが多そうです。
服薬指導前に仮説を立てておくと確認すべきこともしぼられてきます。
今回は「ボグリボースが残っていていそう」と予想してアドヒアランスの確認から入ります。
また、血栓性の心・脳血管障害がありそうですので血糖や血圧の管理も必要そうです。
服薬指導の例
ボグリボースは家にまだ残りがありそうですか?
いや~、どうしても食前の薬は忘れちゃうんだよね。
もったいないからあまりいらないって先生に言って減らしてもらったよ。
では先生に食後の薬に変更してもらいましょう。
いやいや、脳梗塞やった時からあの先生には世話になってるから。
先生が出した処方の通りに飲むよ。
脳梗塞の再発を抑えるためにも血糖管理が必要なんです。
でも薬を飲み忘れると上手くコントロールできなくなっちゃうんですよ。
お薬手帳に書いておきますから今度の受診の時に先生に見せてください。
この前の検査でHbA1cの値はいくつでしたか?
そうなんだ。脳梗塞にはもうなりたくないからなぁ。じゃあお願いするわ。
HbA1cは7.6だったかな。
それから、この前からもらってるおしっこの薬を飲み始めてからトイレが近くてね。
水をたくさん飲んじゃうからかもしれないけど、夜トイレに起きることが多くて。血圧が高いからって始まったんだよね。
ヒドロクロロチアジドのことですね。
おしっこの量や回数が増える薬ですね。血圧手帳持っていたら見せてもらえますか?(130/80台)
少し高めではありますね。でも変えられるかもしれないのでこちらも手帳に書いておきましょう。
悪いね。トイレのことでずっとイライラしちゃってたからこれで何とかなるかな。
睡眠不足なんかは血圧にもあまり良くなさそうですからね。
薬を変える代わりに塩分は減らすようにしてください。
それから血を固まりにくくする薬を飲んでいるので、出血には十分に気を付けてくださいよ。
また何か困ったことがあれば相談してください。
ありがとう。またよろしくね。
お大事に~
基本的には患者さんとの話は主観的な情報(S情報)になります。
しかし、会話の中で検査値や血圧の値など出てきています。
こちらは誰が見ても同じ客観的な情報(O情報)になります。
お薬手帳のところですが、医療機関によってはトレーシングレポートを使っても良いでしょう。
では、服薬指導が終わりましたので薬歴に記録していきましょう。
薬歴の記録の例
S:Subjective data(主観的情報)
どうしても食前の薬は忘れちゃうんだよね。(S-1)
この前からもらってるおしっこの薬を飲み始めてからトイレが近くてね。
水をたくさん飲んじゃうからかもしれないけど、夜トイレに起きることが多くて。血圧が高いからって始まったんだよね。 (S-2)
トイレのことでずっとイライラしちゃってた 。(S-3)
O:Objective data(客観的情報)
【処方箋の内容】
アピキサバン錠5mg 1日2回 1回1錠
朝・夕食後 28日分
アムロジピン錠5mg 1日1回 1回1錠
オルメサルタン錠10mg 1日1回 1回1錠
シタグリプチン錠50mg 1日1回 1回1錠
ヒドロクロロチアジド錠12.5mg 1日1回 1回1錠
ビソプロロール錠2.5mg 1日1回 1回1錠
朝食後 28日分
ボグリボースOD錠0.2mg 1日3回 1回1錠
毎食直前 13日分
BP 130/80台(O-1)
HbA1c 7.6%(O-2)
脳梗塞の既往(O-3)
74歳 男性 身長/体重:165cm/70kgくらい (O-4)
A:Assessment(評価)
(S-1、O-1、O-2、O-3、O-4をクラスタリング)
食前薬によってアドヒアランス低下につながっていると考える。
HbA1cは脳梗塞再発抑制の観点からも7.0未満でコントロールすることが望ましい。
理想体重59kgおよび年齢に対し、アピキサバンは10mg/dayであることから腎機能はそれほど低下していないことが予想される。
そのためメトホルミンなどへの切り替えは可能と考える。
また、血圧も130/80未満でのコントロールが望ましいと考える。
(S-2、S-3、O-1をクラスタリング)
チアジド系利尿剤による降圧利尿を図っているものと予想される。
利尿により飲水が増えることにより夜間頻尿につながっていると考えられる。
また睡眠障害により血圧のコントロールも困難となることが予想される。
アムロジピンやオルメサルタンはまだ増量する余地があるため、チアジドを中止した代わりにどちらかの増量が提案できると考える。
また、塩分制限などの食事療法や運動療法についても確認していく必要がある。
P:Plan(計画)
(S-1、O-1、O-2、O-3、O-4のクラスター)
#1 脳梗塞再発予防のための服薬遵守
OP)アドヒアランス確認、HbA1c確認
CP)お薬手帳へ服薬状況と薬剤変更の提案を記載した。
EP)正しく内服することにより血糖や血圧を管理していくことが重要であると指導した。
(S-2、S-3、O-1のクラスター)
#2 降圧利尿による夜間頻尿
OP)血圧確認、排尿回数確認
CP)お薬手帳へ薬剤変更の提案を記載した。
EP) 利尿剤を中止する代わりに塩分制限について指導した。
上記のものはあくまで例題ですし、他にも問題点はあるかもしれないので薬歴はこの通りにならないでしょう。
いずれにしても書く練習は必要だと思います。
意識してやっているうちに身に付きます。
また、次回の服薬指導につながるように第三者が見ても問題点がわかるようにしておくことが非常に重要になります。
まとめ
今回は薬歴の書き方がわからないという薬剤師の方に向けて事例をご紹介してきました。
少しでもお役に立てれば幸いです。
SOAPとPOSを用いて薬物療法のサポートが質の良いものになると患者さんの満足度も高くなると思います。
大事なことはSOAPのそれぞれに書く内容を正しく理解しておくこと、POSで問題を体系的に捉えることが大事です。
特にSOAPのそれぞれの項目には違うことを書かないようにすべきです。
SやAに検査値を書いたり、Oに主訴を書いたりしてはいけません。
そのためにも薬歴監査を別の薬剤師にお願いしましょう。
全て見せる必要はないと思いますが、1~2症例分を見てもらうだけでも間違いや考えの偏りが修正できます。
S情報を収集するのに苦労しているという方は以下の記事も参考にしてみてください。
それではまた!
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