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薬と栄養の話|薬剤性摂食嚥下障害

栄養の知識

こんにちは、やくえいといいます!

食べることができなくなってくると、当たり前ですが栄養状態は低下していきます。
元気に食べることが健康維持には大きな条件になります。
それを阻害するものの一つとして摂食嚥下障害があります。
食べ物を食べ物と認知できなかったり、飲み込みの力(嚥下機能)が落ちているような状態です。
元気に食べられない状態ですね。

薬の副作用によっても摂食嚥下障害が起こります。
患者さんの栄養状態や健康維持に薬が悪さをしていることがあります。
気管に入って(誤嚥)肺炎を起こしたり、最悪の場合窒息することもあります。
ただし、適切な介入をすれば薬による摂食嚥下障害は改善することがあります。
見過ごすわけにはいかないですよね。

今回はこの薬が引き起こす摂食嚥下障害について記事にしていきたいと思います。

摂食嚥下障害について

摂食・嚥下には5つの段階があると考えられています。

①先行期(認知期):食べ物を認知する、どう食べるか、どう口に運ぶか
②準備期(咀嚼期):食べ物を咀嚼して唾液と混ぜ合わせ塊(食塊)にする
③口腔期:食塊をのどに送り込む
④咽頭期:のどから食道へ送り込む
⑤食道期:食道から胃へ送り込む

株式会社クリニコHPより引用
https://www.clinico.co.jp/medical/worry/worry04.html

この5つの段階を意識しながら食べ物を食べると確実に誤嚥します。笑
そのくらい本来であれば自然にできていることなんです。
例えばアルツハイマー型認知症は食べ物の認知ができないことがあります。
本来であれば直接嚥下機能を落とす疾患ではありません。
食べなくなる結果、嚥下に関わる筋力の低下を起こすことはあります。
その場合はアルツハイマー型認知症の治療薬の投与や、食事の時の声掛けが必要になります。

脳血管障害による麻痺がある方、レヴィ小体型認知症の方の場合は嚥下機能が直接落ちることがあります。
嚥下訓練をしたり、食事の形(食形態)を考えて栄養状態を落とさないようにしなければなりません。

このように摂食・嚥下障害を考える時は5段階に分けて評価し、それぞれ対応する必要があります。
多職種で情報共有する時もどこの機能が落ちているのかを明確にすると目的を共有しやすくて良いです。

薬剤性摂食嚥下障害

薬による摂食嚥下障害もあります。
レヴィ小体型認知症やパーキンソン病などによって摂食・嚥下機能が低下すると元に戻すことは困難です。
一方で、薬剤性摂食嚥下障害は該当する薬を中止すれば元に戻ります。

嚥下には 「サブスタンスP」 という物質が関与します。
このサブスタンスPの合成には脳内のドパミンが関与していると言われています。
そのため、ドパミンを阻害するような薬が嚥下障害を引き起こす可能性があります。

ドパミンを阻害する薬で代表的なものが抗精神病薬です。
本来は統合失調症などに用いられる薬ですが、認知症によって攻撃性がみられるような場合も用いられることがあります。
介護者への負担を減らす目的で認知症患者さんに抗精神病薬を使用することはあります。
使用するなとは言いませんが、使うなら嚥下障害はじめ副作用の確認は必要になります。

似たような言葉で向精神薬がありますが、こちらは別物なので注意が必要です。
とはいえ、摂食・嚥下機能に影響することに変わりはありません。
向精神薬の中にはせん妄を引き起こす可能性があったり、覚醒状況に影響するものもあります。
それにより食事を認知できなかったり、食事中の姿勢が保持できなかったりすることにより摂食・嚥下障害をきたします。

また、抗コリン作用があるといわれる薬は唾液の分泌を妨げたり、認知機能の低下を引き起こします。
代表的なものは過活動膀胱治療薬ですが、他にもアレルギーや胃薬の中にヒスタミンの作用を阻害する薬がありますが、それらも抗コリン作用があると言われています。
該当する薬が1つでは大したリスクではなくても、2つ3つと重なっていくことにより障害が発生する可能性があります。
いわゆるポリファーマシーです。

配色のふれ愛;薬と摂食嚥下障害
https://www.h-fureai.com/column/+medicine-and-dysphagia

嚥下を改善する可能性があるもの

薬の中には嚥下機能を改善すると報告のあるものもあります。
もちろん薬では適応症などがあるため、適応外使用にならないよう注意が必要です。

〇ACE阻害薬:イミダプリル、エナラプリルなど

ACE阻害薬は高血圧症治療薬です。上記のサブスタンスPの分解を妨げる作用があります。
それにより嚥下機能の低下を防ぐ可能性があります。
また、副作用として空咳があり、気管内異物の除去にも役立つ可能性がありますがあまり期待しすぎないでください。
使い方としては他の高血圧症治療薬からの切り替えが妥当です。

〇シロスタゾール

抗血小板薬のシロスタゾールは脳血管障害や冠動脈狭窄等で使われる、いわゆる血をサラサラにするような薬です。
ドパミン神経系の障害を防止したり、サブスタンスPの合成を促すことにより嚥下機能の低下を防ぎます。

〇アマンタジン

抗パーキンソン病薬に分類されます。
ドパミン作用がありますのでサブスタンスPの合成を促すことにより嚥下機能の低下を妨げます。

〇半夏厚朴湯

漢方薬で喉のつかえ感がある症例などに使います。
サブスタンスPを増加させることにより嚥下機能の低下を防ぎます。
顆粒の量が多いので直接飲ませるのではなく、白湯に溶いて飲ませると良いと思います。
場合によっては白湯に溶いた後にとろみ付けもすると良いかと思います。

また、薬ではないものの嚥下機能の改善が見込まれる食品もあります。

・少量のカプサイシン
・ミント
・ブラックペッパー

香りや刺激によって嚥下反射が惹起される可能性のあるものと考えられています。
やはり人間食欲には正直というところでしょうか。笑

まとめ

今回は薬剤性摂食嚥下障害についてご紹介してきました。
摂食嚥下障害は食べることに直接影響していきます。
栄養状態が低下することは目に見えていますね。
それだけではなく、食べることはその人に取っての生きがいでもあります。
元気に食べることは健康でその人らしい生活を送る上ではとても大事な因子になります。

疾患によって低下してしまった摂食嚥下機能を戻すことはなかなか難しいことがあります。
しかし、薬剤性の摂食嚥下障害であれば薬を見直すことによって改善する可能性があります。
薬の見直しに介入するのは薬剤師だと思われがちですが、こういった嚥下障害については看護師さんやSTさん、介護者のほうが気付きやすいかもしれません。
そういった方にも薬剤性嚥下障害についてご理解頂けましたら幸いです。

今回を機に一人でも多くの方に薬と栄養の関係について興味を持って頂ければ幸いです。

それではまた!

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